令和国際大学

グローバルビジネス学科コミュニケーションデザイン学部

2019-05-15 私の好きな画力(えぢから)映画5選

ところで私は映画も好きなので映画の話もします。

 

画力(えぢから)とは何か

「画力(えぢから)」とはストーリーやプロットとは別にヴィジュアルとしてのカットの美しさの破壊力を表す単位で、往々にして言語的な情報やコンテクストを超越するパワーがある。緻密なヒューマンドラマも好きだけれど、他方でやっぱ画力(えぢから)ってつえーなーと思うことも多く、今回はそんな画力(えぢから)のパワーが凄まじい映画をいくつか紹介したい。

 

画力(えぢから)映画を楽しむために

スマホで見るな。デカい画面で見ろ。クソイヤホンじゃ音の作り込みが拾えないように、小さい画面では画力のバイオレンスは縮減してしまう。画面はデカければデカいほど良い。18インチの4Kテレビで見るぐらいなら、デカいシャープの中古テレビのほうが絶対良い。ある意味画力(えぢから)とは画面のデカさでどれだけ映えるかという単位でもある。

 

01.シャイニング

シャイニング (字幕版)
 

画力(えぢから)という言葉を聞いてもピンと来ない方は、シャイニングと聞けば「あーそういうことね」と思っていただけるのではないだろうか。元々はカメラマンということもあってか、画力監督として名高いスタンリー・キューブリックの作品の中でも、とりわけゴリ押し画力を死ぬほど堪能できるのがこの作品。シャイニングといったらコレ!といったビジュアルがいくつも思いつく程に一つ一つのカットの構成力がえげつない。画力が持つ破壊力を熟知し、そのバイオレンスを縦横無尽に使い倒した、まさに元祖・画力による暴力監督の面目躍如というべき一作。

 

02.ガタカ

ガタカ (字幕版)

ガタカ (字幕版)

 

トゥルーマン・ショーの脚本等で名高いアンドリュー・ニコルによる画力SF映画。先述のシャイニングのようにホラー/サスペンス映画が画力バイオレンスと親和性が高いのは言うまでもないが、SFもまた画力と不即不離の関係にある。そんな中でも、VFX(映像効果)ではなく、セットやロケーションによる画力の強さをこれでもかと見せつけてくるのがこの映画だ。ともすればSF映画のヴィジュアルの出来はVFXの出来にそのまま比例するような風潮があるが、この作品はそんなVFXの力に頼るのではなく、あくまでセットと構図のパワーでゴリ押しするという稀有なSF作品となっている。

 

03.インターステラー

キューブリックが旧・画力暴力監督だとすれば、クリストファー・ノーランは新・画力暴力監督だ。特に近年のノーランはもはやストーリーやプロットの出来、メッセージの妥当性などは二の次三の次となり、とにかくカッケー映像を作りたいというマッド画力ディレクターと化しているきらいすらある。多分おかしくなったのはダークナイトライジングのグダグダを経てからのインターステラーの前作・インセプションあたりで、そのインセプションの撮影でガタカのようなセットと構図の美学に加え、VFXによる暴力もてんこ盛りに盛り込み、画力による暴力に目覚めたノーランは、ジャンキーの哀しき習性だろうか、この作品ではそのバイオレンスを更に腹五十分目までぶち込んでくる。また、かつてのノーランと言えばメメント等に代表される時間軸操作の旗手であったが、当然そういった仕掛けも盛り込んでくる。ついでに家族愛のようなものも混ぜ込んでマイルドさを演出しようとするが、一面のニンニクペーストの海に一滴の酢のような存在感しかない。とにかく全体としてトゥーマッチもトゥーマッチ、バランスもヘッタクレも無いSF界のラーメン二郎と化した怪作を世に放つこととなったが、ジャンキーが本気で作ったシャブのような映画を前に中毒者が続出。かくいう私も映画館で4度見ました。有志の映画製作倫理協会員みたいな人らからのマジレスを食らうことも多い本作だが、ジャンキーからすればそんなことは知ったこっちゃない。よくわからんけどとにかく凄かった、そんな画力映画を求めてるなら最初にオススメしたい一作。

 

04.未来を乗り換えた男

未来を乗り換えた男 [DVD]

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シャイニングやインターステラーが「動」の画力だとすれば、まだあまり有名では無いこの作品は「静」の画力を堪能できる作品。とうとうネオナチが権力を得た近未来のドイツ、数多くの伝承が語ってきたような惨劇が再び繰り広げられつつある中で、主人公はどうにか命からがらフランスに逃げ、そこからの亡命を果たそうとするというプロットなのだが、主人公が逃げた先のマルセイユの静かで美しい街並みを寄り引き自由自在で写真のように切り取ったその1カット1カットの美しさは息を飲むほど。その静かな美しさと、社会に巻き起こっている激動の状況との見事なギャップは不思議にSF的でもあり、また、案外こんなものなのかもしれないと現実的なようにも思えてくるから面白い。登場人物の行動選択の不条理さは視聴者によっては受け付けないこともあるようだが、それもまたサルトルの小説のようだと感じられると楽しめる。画力というメインディッシュをしっとりと静かに味わいたい方にオススメしたい一作。

 

05.少年

少年 / ユンボギの日記 [DVD]

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最後は大島渚の1969年の作品、少年。言うまでもなくVFXも無し、それどころか色調整も最低限しか出来なかったであろう時代、構図と画角と尺だけでここまで画力を高められるのだということを嫌というほど教えてくれる一作。ロードムービーという性質上、当時の日本の全国風景をしっかりと写し込んだこの映画は、見ている我々をまるで現代からその時代にタイムスリップしたかのような思いにまでさせてくれるという意味では、SFに勝るとも劣らない誘引力がある。そんな時代を超える画力を可能としているのは、やはり真摯な画作りに他ならないだろう。画が持ちうる力の中でも、普遍性として残り続ける力がある、ということを我々に教えてくれる、寡黙ながらも何よりも雄弁な一作だといえよう。