令和国際大学

グローバルビジネス学科コミュニケーションデザイン学部

2019-04-30 Lean UXようやく読み終わった

 

Lean UX 第2版 ―アジャイルなチームによるプロダクト開発 (THE LEAN SERIES)

Lean UX 第2版 ―アジャイルなチームによるプロダクト開発 (THE LEAN SERIES)

 

 大変だった。pdfで257ページあって、メモを取りながらだったので結構時間がかかった。

多分キモとなるのはMVP:Most Viable Product(実用最低限のプロダクト)を作り続けましょうという考え方で、このMVPにおける「実用性」という部分をあくまでユーザーのリアクションによって判断しましょうという話が大きなテーゼとしてある。そういう態度は一貫していて、いやユーザーのリアクションこそが全てなんだから、変なドキュメントだとか社内政治だとかそういうの全部要らねえっすよねっていう話で、プロセスを軽量化しろ、社内のセパレーションを取り払ってそれに向かって邁進していけ、そのためには高速で仮説設定→MVP作成→ユーザーテストを回し続けろという、ある意味ラディカルな話がずっとされているという感触。んで、そのプロセスを回転させるために、初期のUXデザインをしっかりやれよ、ペルソナはしっかり作れ、誰がどんなアイデア持ってるかわかんねえだから職責や職域に拘らずブレストに参加させろ、それもタイム感をタイトにして凝縮して行え、という話。

というところで、だからこういう風にUIはデザインしましょうだとか、こういう風な言語を選んでこんな風にしてコミットしていきましょうだとかそういう具体的な話は少ない。あくまで、LeanにUXデザインを向上させていくための基本設計図の組み方から回り始めまでを述べているというところで、逆に言うとこのタイム感を実現するためにはどういう風にデザインなり開発なりを組み立てていくべきかっていうところを各々が逆算して別途考える必要がある。

で、そんなわけでLean UXableなデザインフローとしていま考えているのは、これにデザインシステムとかアトミックデザインを掛け合わせる方法。「直しに強いデザインシステム」を組んでおかないとLean UXのスピード感に追いつけなくなるから。ミニマムなところから作り上げてテストしていくのはアトミックデザインの特質だけれど、それもLean UXと親和性が高そう。まあ後は、イテレーティブにユーザーテストしていく体制とかけ合わせれば、加速度的にガワの良いものは出来ていくんじゃねえかなと思う

あと、2019-04-05 Lean UX途中まで読んで思ってること - 令和国際大学でも書いたように、確かに一見するとプロセスがめちゃくちゃ多くてゲンナリしてたんだけど、これをバカ正直に全部なぞらえる必要はないのだろうし、そもそも「全ての成果はユーザーのリアクションからわかる」というのは、Apple的なプロセスではないのかもしれないけれど、他方で「ジョブズが全部決める」のか「ユーザーのリアクションが全部決める」のかの違いだけなのだと捉えると非常にわかりよいかもしれない。ただ、ジョブズの場合、「シンプルの杖」だなんて言われるように、「この要素要らんやろ」だとか「この導線って簡単にできませんか?」ということをラディカルにやる、というプリンシパルがあった。Lean UXの場合、物事が複雑に、ややこしくなっていった場合でも一応はMVPを作ってユーザーテストを挟んだほうがいいということにはなると思う。場合によっては、ユーザーテストの声を敢えて裏切るであったり、もしくはより考え詰めてシンプルな解決策を提示しなければならない、といった手間は生じうる。

また、Appleは製品やクリエイティブのユーザーテストなんてやんないでしょ、という話もあるのだけれど、それは彼らが商品を必ずや「イノベーティブに見せたい」という動機に基づいている部分も多分にあるんじゃないかと思う。確かにイノベーティブに見えるものは魅力的だ。だけど、それって体験としての入り口でしかないというか、結局は触ってみてクソだったらこんなに広まることはない、つまりは体験の内実としてイノベーティブでないといけないわけだし、その辺りのクオリティコントロールジョブズという人間がズバ抜けて上手かったというのがあると思う。インサイダーとして携わってきたプロセスとかを全部ぶっこ抜いて突然にエンドユーザーの気持ちに完全に憑依できるっていうのはジョブズのえげつない才能だと思うし、その才能があれば多分どんな分野のプロダクトを作らせても凄かっただろう。我々デザイナーがシラフなら出さないようなモノを往々にして作ってしまうのは、そういったジョブズの憑依能力を持たずに、携わってきたコンテクストから離れられないからだ。ただ、多くの組織にスティーブ・ジョブズはいないわけで、だったら実際にエンドユーザーに近い人に使ってもらってみせてリアクションを見ましょうよっていう話に過ぎない。要はAppleにおいてはユーザーテストの代わりにジョブズテストがありましたっていう話だけに過ぎないのではないかと。

で、そこで絡みがあるとすれば、「市民に欲しいものは何かと聞いたら、彼らはより早く走る馬だと答えただろう」っていう自動車王フォードの言葉があるけれど、イノベーティブなものを作って売る、まさに馬の時代に車を売るようなことをするならば、それはユーザーヒアリングなんて無意味だろう。けれど、僕らは別に馬の時代に車を売るわけでも、Blackberryの時代にiPhoneを売ろうというわけでもないのだから(そういう方はすみません)、それよりはずっとユーザーヒアリングが実効性を持つプロダクトを作っていると思うし、やはりそれならばLean UX的なプロダクトメイキングはかなり効果的に思う。