令和国際大学

グローバルビジネス学科コミュニケーションデザイン学部

2019-05-17「UXリサーチの道具箱」読んだ

これまでのあらすじ

UX・UIデザイナーとしてあるプロジェクトに参加した私だったが、UXデザインについて学べば学ぶほどにリサーチのことを何も知らないことを痛感する日々であった。

UXリサーチの道具箱 ―イノベーションのための質的調査・分析―

UXリサーチの道具箱 ―イノベーションのための質的調査・分析―

 

 UXデザインはリサーチと不即不離である

それは「Lean UX」読んでた時もそうなんだろうなと思ってたし、「道具箱」を読んでも、またそこから派生して「ジョブ理論」(後述)を読んでいる今でも感じている。以下の引用はいずれも「道具箱」より。

本書の主張をひと言でいえば「製品開発はユーザ調査から始めよう!」です。

「何をすれば“調査”したと言えるのか?」――。この不安に苛まれるのは、あなただけではありません。かのジェフ・パットン(『ユーザーストーリーマッピング』の著者)もその 1人だったようですが、彼はこう述べています。 「以前、私は『リサーチ』という言葉に囚われすぎていた。それはとても科学的な響きを持っているが、私は科学者ではないからだ。後になってやっと、ユーザと普通に話をしたり、彼らの作業の様子を見たりすることが『リサーチ』と言えるのだとわかった。もちろんもっと厳密な方法はあるが、最低限、ユーザを自分の目で直接観察すれば、それで良いのだ。」

私たちが聞くべきなのはユーザの「声」ではなくて「体験」です。まだ加工されていない“生”の体験談を入手して、それを私たちが分析すれば、ユーザ本人でさえ気付いていない“暗黙”のニーズまで把握することができるでしょう。そして、そこから(素人の)ユーザでは想像もつかないような解決案を提案してこそ「プロフェッショナル」といえるのです。

「何が欲しいか」は知らないが、「何に困ってるか」は知れる

マーケティングイノベーションみたいなことについて述べている議論で、よく挙がるのが「自動車王」フォード(が言ったとされる)下記の発言である。

もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。

これはユーザーの声をダイレクトにプロダクトに反映することの愚かさについて言及している例や、はたまたユーザーは自分自身の課題について正確な見識を持ち合わせていないことの例として挙げられる。要は、ユーザーは自分が何が欲しいかを知らないということだ。それはかなりの程度そうだと言える。が、だからといってユーザーリサーチは無力なのか?と言うと、決してそうではない。確かに、ユーザーリサーチでは「何が欲しいか」というレイヤーで聞くと不正確かもしれない。ただ、「何に困っているのか?」というのは、聞き方次第で出てくる。そしてそのソリューションは、まずは自分たちで考えるのだ。たとえば、上述の車と速い馬の例で言えば、「何が欲しいか?」と聞かれればそれは「もっと速い馬」と答えるだろう。しかし、何に困っている?と聞けば、「うちの馬が遅いこと」という回答は十分ありうる。そこで、「じゃあ何らかのツールを使って〈遅い〉の部分を解決することができればイノベーションなのではないか?」と考えることが出来るだろう。これはまんま、Uberイノベーションを起こした構図と同じである。「もっと速く捕まって正確な道筋と金額で運んでくれるタクシーが欲しい」という声を聞いて、「タクシー」以外のツールで解決できればいいのでは、と考えたのがUberだ。

ジョブ理論によるリサーチの深化

「人はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ。」

この引用文が用いる構造に則れば、先程の車にせよタクシーにせよ、「人は馬が/タクシーがほしいのではない。速く確実に目的地にたどり着きたいのだ」ということになる。この「〜したいのだ」に当てはまるものを探ろうというのが「ジョブ理論」であり、このジョブをユーザーリサーチやインタビューを用いて特定することから始めればイノベーションにぐっと近づく。フォードにしてもUber創業者の二人にしても、この「移動に関するジョブ」を起点に考えることが出来たため、既存のソリューションに惑わされずプロダクトを世に放つことができた。

残念ながら、この非常に魅了的な「ジョブ理論」に関しては、「道具箱」ではそこまで深掘りされているわけではない。UXリサーチのためには、他にも紹介すべきツールやプロセス、フレームワークが多数存在するからであり、それはそれとして非常に意義深いものとなっている。だが、この「ジョブ理論」を大骨格としてリサーチを進めていくべきだという天啓に基づき、下記の原典にあたっている、というのが現状である。

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位!  ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

  • 作者: クレイトン M クリステンセン,タディホール,カレンディロン,デイビッド S ダンカン,依田光江
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2017/08/01
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログ (6件) を見る